ふたりきり足裏合わせ笑みかわすアイスナインで凍てつく世界
なにもかもをどうでもいいと思うことです シンクにこぼすひとひら
さびしさは土に埋めます隠しますだけどそこから芽が生えてきた
なにもかも憂鬱な夜閉じ込めて小瓶に入れてたまに見返す
なにもかもまちがいながらすれちがいふりむきざまにお互いまたね
模試結果、科目「友達」ランクD 仲間に入れてさえも言えない
かくれんぼ仲間に入れて言えなくて 科目「友達」いつも赤点
君なんか消えてしまえと思ってもやり過ごしつつ今日も寄り添う
思い出に感情というスパイスを あまりに辛くてちょっとむせる
さびしいとさびしくないのシャトルラン 「もう疲れた」と立ち止まり泣く
空港の荷物検査で規定超え さびしさ重く飛行機乗れず
点と点二人の距離は近づいて 崩れていく正三角形
シミュラクラ機械仕掛けのシナプスはヒトもどきのパルスを発する
引き金を引く瞬間に夢を見る インスマウスのものどもの顔
気にするなだってあの娘は羽がない空へ向かって逃げちゃえばいい
なにもかも大丈夫だよ目をつむりまたコーヒーにクリームを足す
三日月のクロワッサンを分け合って二人で食べた春の真夜中
人生の服用量を守ること 適度に死んで依存を防げ
意識は感情の奴隷 薄桃色の折り紙をゆっくりと折る
あのときの青い気持ちを採取してことこと煮詰めゼリーで食べる
透明で深い氷のやさしさを縋っていたら溶けてしまった
光速が解明される時代でも歩く速さでよりそっていく
空色の水たまりの中パラレルな世界にパラソルを持つ君
神様にミュートされても息するし酸素がないと生きてけないよ
真夜中にぎゅっとするのが愛ならば私は愛を愛しています
選ばれなかったものは選ぶことを知らず 桜桃をひとつぶ食べる
いいことなんてぜんぜんないんです 梔子の花を封筒に入れ
たこやきをひっくり返すそのときにそうだ明日も生きてみようか
夕暮れの規制ラインを乗り越えて私だけが溶けてゆく闇夜
川の中青を感じて渡ってく 光によって救われたいよ
どうしてもつかめない幸せは紅茶に溶けゆく砂糖菓子の城
憂鬱で布団に沈む真夜中に金魚になってすくわれる夢
ほんとうはたすけてほしい青空は気づいてほしくてたまに曇り
しあわせになれぬぼくらのあいさつはさよならだけがほんものだった
しあわせをおすそわけする義務があり作ったモチを一つ差し出す
しあわせになりたかっただけ金魚うきぶくろを赤くふくらませる
折り鶴が空を飛びたいその横で紙飛行機が空を飛んでく
鮮烈な恋をしたいと思いつつトロサーモンを一口で食う
えらいって言われるよりも大好きといわれたくなる雨降りの午後
マスカットあざやかに口の中ではじける 辿る道はどこだろう
さよならの意味を知ってるふりをしたひえた光が今日はまぶしい
しあわせを果たせなかった週末にサザコーヒーでブラックを飲む
間違った人を好きになってしまうテストみたいにバツをつけてよ
しあわせは見えはするけどつかめない 桃に小石を打ち付けてみる
胃袋が締め付けられる憂鬱で手慰めの鶴たち十匹
夕焼けにかかった虹が弓のよう 希望よはやく砕けてしまえ
雨粒が逆さに落ちる夢を見た願うだけでは叶わない春
レンジ内銀の上にてピザ焼けてとかちとかちと胸の高まり